いじめ事件被害者に対する学校の対応

  1. 横浜における原発避難児童に対する学校対応の遅れが大きなニュースになっています。調査委員会が設置され問題点の検証が行われる予定であると伝えられています。大津中2いじめ自殺事件でも、学校が数々のタイミングを失したことが明らかになっています。
    いじめが発覚したあとも、学校は、できるだけ事実を矮小化しようとします。当事者を仲直りさせることで収拾の体を取り繕おうとすることは前回書いたとおりです。
    そればかりか、いじめ被害者サイドに嘘をつくこともあります。当事務所が取り組んでいる高島市の小6女児いじめ事件でも、学校長が被害児童の保護者に対して虚偽の説明をするということがありました。

  2. 虚偽の説明があったのは、本年10月22日のことです。2日後の同月24日には、加害児童のうち1名の保護者からの謝罪の申入れを受けて、学校において、学校長立ち合いによる面談の場が設定されるはずでした。しかし、同月22日に所用で学校に赴いていた被害児童の父親に対して、学校長は、知人から言われたとして、24日の面談をキャンセルしたいと伝えてきました。しかし、その後、学校長の代理人からのファックスにより、知人から言われたとの説明が虚偽であったことが判明しました。そのファックスの内容は次のとおりです。

    • 「同月24日の面談のお約束後、同月24日午後に教育委員会と弁護士(当職)との本件に関する協議が行われることとなりました。この時点で校長が県教育委員会から派遣されたカウンセラー及び高島警察署生活安全課に意見を求め、そのそれぞれが、弁護士代理人を立てて話し合いをする方向となるのであれば、事前に校長が話しをすることは望ましくなく、少なくとも教育委員会と弁護士との協議結果を待つべきであるとの助言を行ったために、校長が面談をキャンセルするに至ったとのことでした。 虚偽の理由を告げて面談をキャンセルしたこととなっており、適当な対応であったとは思われませんので、この点につきましては、校長を代理してご報告させていただくと共にお詫び申し上げる次第です。」

  3. もし予定どおり面談が行われていればどのような謝罪がなされることになったのかは今となっては知る由もなく、被害者サイドが謝罪を受け入れたかどうかもわかりませんが、加害者サイドが被害者サイドに誠意をもって謝罪することは当然のことであり、その当然のことを、学校長が、こともあろうに虚偽の理由を告げてキャンセルしたというのは信じがたいことです。学校長の代理人からのファックスには、キャンセルの理由は、「弁護士代理人を立てて話し合いをする方向となるのであれば、事前に校長が話しをすることは望ましくなく」と書かれていますが、加害児童の1人の保護者が謝罪の意向を示したことから設けられることになった面談をキャンセルする理由としては合点のいかないものです。高島警察署が助言を行うという点も極めて奇妙です。
    学校長の代理人からの上記ファックスは、これらの疑問点を十分に説明するものではありませんので、これらの点について説明を求めていますが、回答期限である11月22日から1週間が経過した本稿時点においても、まだ回答はありません。
    また、被害児童の保護者としては、学校長から虚偽の説明をされたことにショックを受けているところ、このことに対する学校長の謝罪が代理人によるファックスでなされたという点についても、非常識であるとの思いを抱いています。このことも学校長には伝えていますが、直接面談して謝罪するという申し入れはありません。

  4. いじめ事件において、被害者サイドに対する学校の対応がずさんであるということは、時々報道もされますが、現場ではごく普通に見られる光景です。高島市の上記対応も、ほんの氷山の一角です。いじめ事件は発覚すればそれで解決ではありません。被害者サイドは、発覚後の学校の対応によりさらに傷つけられるのです。それが学校いじめの現場で起きている現実なのです。
    いじめ被害者が学校からどのような扱いを受けているのかという現実を知ってもらいたくこの記事を掲載することにしました。一人でも多くの皆様が関心を寄せてくださることを望みます。
 

この記事を書いた人

吉原稔法律事務所