大津市が管理運営する同市立保育施設を紹介するホームページ上に、心と体の性が一致しない「性別違和」に関する症状、受診歴などの個人情報が、本人の同意を得ないまま掲載されました。掲載された情報に、個人の氏名などは含まれていませんでしたが、自分の性に「違和感」を訴えたことや「診察を受けた」という情報のほか、年齢、受診時期も記載されていました。
園児側は、同意を得ないまま、性別違和という重要な個人情報が、本人を特定できる状態でホームページに掲載されており、園児の人格権を侵害する「アウティング」であるとして、令和2年12月、大津市を相手取り、ホームページの削除を求める訴訟を、大津地裁に提起しました。
これを受けて大津市は、令和3年1月、原告である園児側の求めに応じ、文書の公開を中止し、これを削除しました。
近時では、個人の性自認、性別違和など、性別のあり方について、本人の同意なく、あるいは本人の意思に反して、第三者に暴露する行為は、一般的に「アウティング」と呼ばれ、社会問題化しています。
「アウティング」は、プライバシー侵害につながり、自認する性別に即した円満で平穏な社会生活を送る権利を侵害するのみならず、中には、これによって自死に追い詰められるなど、個人の生命、健康に深刻な影響を及ぼす可能性すら指摘されています。
なお、「アウティング」については、東京高裁が、令和2年11月25日、人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、許されない行為であることは明らかなどとして、その違法性を認める判断を示しています。
今後、本件のような「アウティング」が繰り返されることがないよう、行政としての認識がより深まることを期待するばかりです。
なお、本件に関する園児ご家族のコメントは、以下の通りです。
「知人から大津市のホームページに、子どもの受診歴や受診日、内容等が掲載されていると連絡があり、初めて目にし、おどろきました。知人は、内容を読みすぐ誰であるか特定できたそうで、不特定多数の人から閲覧できる状態になっていました。
同意なきアウティングは、人の生命にも関わる危険行為であり、今後このような事が二度とないよう、提訴に踏み切りました。
大津市とは話し合いを進めてきましたが、対応があまりにも不十分で残念でなりませんでした。性別違和で理解を得られずに苦しんでいる人がいることを知ってほしいです。
大津レインボー宣言を公表しているにも関わらず、行政は問題を正しく理解していません。性的少数者の子ども達は周囲から理解されず、偏見・差別・いじめや、からかいの対象になりやすく、市の職員や教職員の方々には、正しい知識、関心を持っていただきたいと思っております。
大津市に対しては、これまでの経緯を詳細に調査して原因究明と再発防止を徹底してほしいと願っています」。