生活保護費過支給金返還請求処分が取り消されました

大津市福祉事務所の生活保護費過支給金返還請求処分が取り消されました(滋賀県知事への審査請求)

【事案】
大津市内在住の20代の女性が、平成25年7月から、父親と2人世帯で生活保護を受けていました。
同年10月から、父親は県外でショートステイを利用することになったので、大津市福祉事務所としては、本来短期入所生活介護基準での保護費への認定替えを行うべきであったのに、平成27年9月末まで誤って居宅基準に基づいて保護費を支給し続けていました。
そこで、大津市福祉事務所は、この女性に対して、平成25年11月から平成27年9月まで誤って過支給した646,640円の返還を求める処分をしました。

【審査請求】
これに対して、女性は、父親のことは生活保護の担当者に話していたし、定期的に家庭訪問もしてもらっていた上での保護費支給だったので、過払いがあるなんてことは知る由もありませんでした。
突然高額を返せといわれても返せるわけがありません。
そこで、この理不尽な請求を取り消してもらうべく、平成28年1月29日、滋賀県知事この処分の取り消しを求めて審査請求を行いました。

裁決】
平成29年2月23日、滋賀県知事は、処分を取り消すとの裁決をしました。
大きな理由は以下のとおりです。
保護の実施機関が,返還額決定をする場合、自立更生費の有無,地域住民との均衡,その額が社会通念上容認される程度であるかどうか,全額返還が被保護者の自立を著しく阻害するか等の点について考慮すべきであるのに、大津市福祉事務所が女性に聴き取り調査をするなどして自立阻害等事由を考慮したとの事実は確認できない。
本件過払い金は、大津市福祉事務所が保護の程度の決定を誤ったことにより生じたこと、女性がそれを知っていたとの事実も確認はできないこと、また女性が本件過払金の全額を直ちに返還できる資力を有していたとする事実も確認できないこと、本件過支給額が高額であることから、自立阻害等事由を考慮する必要がなかったということはできない。

【代理人コメント】
大津市福祉事務所に限らず、生活保護を扱う機関は、憲法25条及び生活保護法の趣旨を正しく理解し、法律に沿った運用をして頂きたいと思います。
今回の審査請求を教訓として、再発防止に努められることを願います。

この記事を書いた人

吉原稔法律事務所