高島市教育委員会がひどすぎる件
高島市の小学校で発生したいじめ事案に関して、当該小学校の校長が被害児の保護者に虚偽の説明をしたということを過去に書きました。 これだけでも、とんでもなくひどいことなのですが、高島市のひどさはこれだけに止まりません。第三者調査委員会を立ち上げて調査を開始することになったのですが、これがまたひどい話なのです。特にひどいと思うのは次の4点です。
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被害者サイドとの事前協議を行わない点
学校いじめが発生した場合に調査委員会が置かれることがありますが、多くの場合、被害児サイドの意向は尊重されません。無視されることすらあります。そうした現状を踏まえて、文部科学省では、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を策定中です。
策定中の素案には、保護者に説明するべき事項として、①調査の目的、目標、②調査主体(組織の構成、人選)、③調査時期・期間(スケジュール、定期報告)、④調査事項(対象となるいじめ行為、学校等の対応)、⑤調査方法(アンケート調査の様式、聴き取りの方法、手順)、⑥調査結果の提供(被害者側、加害者側に対する提供等)の6点が挙げられ、人選と調査方法については、被害者サイドから要望があれば可能な限り反映させるものとされています。
しかし、高島市の対応はこのガイドラインに全く沿っていません。
高島市は、平成29年2月7日に説明を行ったと主張していますが、このとき言及があったのは、「委員会は学校の下に設置する方向で動いている」「法律、心理、福祉の団体に推薦依頼中である」「校長が諮問する形にする」「教育委員会が庶務を担う」「不登校に至った事実関係の整理、復帰支援、再発防止を目的とする」という点だけであり、ガイドライン素案との関係で言えば、②具体的な人選、③調査時期・期間、⑤調査方法、⑥調査結果の提供については、何ら説明がありませんでした。
また高島市は、平成29年2月13日に保護者向け配布物の中で説明を行ったとも主張しています。しかし、これは第6学年保護者向けに配布されたプリントのことであり、被害児の家庭では、下のお子さんがこのプリントをもらって帰ってきましたが、このことをもって「調査委員会について説明した」というのは詭弁というほかありません。実際、このプリントについて、被害児保護者に対する直接の説明は一切ありませんでした。 -
委員の一人が高島市の代理人弁護士と同じ事務所に所属していた点
第三者調査委員会は、読んで字のごとく「第三者」として公正中立な立場で調査を行うことが求められます。実際の調査が公正中立に行われなければならないことは言うまでもありませんが、公正中立に疑いが持たれること自体も避けなければなりません。
しかし、なんと驚くべきことに、高島市の教育長と校長の代理人である弁護士とかつて同じ事務所で仕事をしていた弁護士を委員に選出したというのです。
第三者調査委員会では、「学校や教育委員会の対応のあり方」も調査する予定になっているとのことです。この点の調査結果次第では、後日、教育委員会や校長の対応の法的問題を追及する展開になることも考えられます。そのときに教育委員会や校長の対応を弁護する可能性のある弁護士と第三者調査委員会の弁護士委員が、かつて同じ事務所で仕事をしていた間柄だというのです。しかも、その弁護士委員が、第三者調査委員会の委員長を務めるというのです。
これは、第三者調査委員会の公正中立に疑いを生じさせる事態だと思います。皆さんも少し考えてみてください。刑事裁判の被告人が裁判長の別れた奥さんだったとしたら、公正な裁判に疑義が生じないでしょうか?もしこのようなことがあれば、検察官からは裁判官忌避の申立がなされるでしょうし、裁判官自身も審理への関与を回避するだろうと思います。
被害児の保護者は、平成29年3月14日、高島市教育長と校長に対して、委員の選任をやり直すように求める文書を送付しました。
※平成29年3月29日、高島市教育委員会から、選出されていた弁護士委員が辞任し、新たに滋賀弁護士会から他の弁護士の推薦を受けたとの連絡がありました。 -
できもしない調査目的を掲げている点
平成29年2月13日に校長が第6学年保護者向けに配布したプリントには、「調査の目的」として、「いじめにより不登校に至った疑いがある児童が欠席を余儀なくされている状況を解消し、学校復帰の支援につなげること」と書かれています。しかし、この目的は達成不可能です。
被害児は小学6年生です。平成29年3月22日には卒業式がありました。一方、調査委員会の第1回会合が行われたのは、平成29年2月23日であり、このときは、委員長を互選で選出するところまでしか進まず、調査の進め方等は同年3月17日の第2回会合で話し合う予定になっていたとのことです。
一体どうやって、3月22日の卒業式までに上記目的を達成するつもりでいたのでしょうか?
そんなことは誰が考えても不可能ではないでしょうか?
被害児の保護者と代理人は、平成29年2月7日、校長と教育委員会の指導主事に対して、そのような実現不可能な目的を掲げることは疑問である旨を伝えていましたが、結局、見直しが行われることはありませんでした。 -
目的達成に必要な知識経験を有する委員がいない
学校長は、第三者委員会に対して、「本事案に係る学校及び教育委員会の対応のあり方について」諮問するようです。
しかし、第三者委員会の委員は、弁護士、臨床心理士、社会福祉士・精神保健福祉士の3名であり、学校や教育委員会の現場に通じた教育の専門家がおりません。
例えば、大津市中2いじめ自死事件の第三者調査委員会には、教育評論家の尾木直樹さんが参加していましたが、それは、尾木直樹さんが、教員経験があり学校現場に通じていたからです。最近大津市立小学校でのいじめ事案の報告書の公表を巡って報道が行われた一件がありましたが、その報告書の作成にも、教員経験のある教育問題の専門家が委員長として参加しています。
学校や教育委員会の対応のあり方について調査を行い、評価を実施するためには、学校や教育委員会の現場に通じた教育の専門家が必要です。そうした専門家を欠いた委員会がどうして学校や教育委員会の対応のあり方について調査を行い、評価を実施することができるのか、極めて疑問であり、これらの点についての調査を骨抜きにするために、わざと専門家を参加させていないのではという疑念すら湧きます。 -
高島市教育委員会はひどすぎる
以上書いてきたように高島市教育委員会は本当にひどいです。 当事務所はこれまで、いくつかの教育委員会と折衝してきた経験がありますが、その中でも格別にひどいと思っています。
高島市では、大津いじめ事件にも関与した立命館大学の野田正人氏をコーディーネーターとして、「ストップいじめ対策会議」を開催するなど、いじめ問題に取り組んでいるようですが、被害者に寄り添う姿勢という一番大切な部分が抜け落ちているように思われてなりません。