亀岡暴走事故元少年らに被害者妊婦の両親・兄・妹への賠償命じる1審判決が出ました

“朗報”亀岡暴走事故元少年やその父親らに被害者妊婦の両親・兄・妹への賠償命じる1審判決が出ました(京都地裁)。

京都府亀岡市で2012年4月、集団登校中の小学生ら10人が死傷した暴走事故で、死亡した妊婦幸姫さん (当時26歳)の父親、母親、兄、妹ら遺族4人が、車を無免許運転していた元少年 (自動車運転過失致死傷罪などで有罪確定)やその父親、同乗者、車の所有者ら5人に計約3300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2016年12月16日、京都地裁であり、判決は全員に慰謝料など計330万円の支払いを命じました。

判決によると、元少年は12年4月23日朝、無免許で居眠り運転し、集団登校に付き添っていた妊婦幸姫さんと女児2人の計3人を死亡させ、児童7人に重軽傷を負わせました。

本件訴訟において、原告ら遺族の代理人に就任した吉原稔法律事務所・弁護士石川賢治、弁護士向川さゆり、弁護士石田達也、弁護士稲田ますみ(滋賀弁護士会所属)は、①元少年の父親の監督義務違反、②同居していない父母及び同居していない成人のきょうだいの慰謝料請求、③無免許運転が改正前の危険運転致死傷罪に相当することの3点を主張しました。

  1.  ①元少年の父親の監督義務違反について

    未成年者が責任能力を有しない場合の親権者の責任は民法714条に明文の規定がありますが、責任能力を有する場合について定めはありません。未成年者が責任能力を有する場合には、親権者に対しては、一般の不法行為責任(民法709条)によって賠償請求することになります。未成年者が責任能力を有する場合にその親権者に責任追及するためには、一般の原則に従い、被害者遺族の方で、監督義務者である親権者の過失及び因果関係を立証しなければなりません。

    本件の元少年らは、責任能力を有する未成年者でしたから、原告は、一般の不法行為責任によって賠償請求し、原告の側で、親権者の過失及び因果関係を立証する必要がありました。

    判決は、①無免許運転について元少年の父親の監督責任を述べた中で「運転技能が未熟で、『自動車は凶器になり得る』という基本的教育を受けておらず、他人の身体を傷つける結果が生じることが容易に予見しうる」として監督責任を認めました。

    これまでの裁判例において、交通事故における責任能力を有する未成年者の親権者の責任については、肯定例と否定例が拮抗しており、その中にあって、本件判決は、今後の同種事案においても参考となる意義あるものとなりました。

  2.  ②同居していない父母及び同居していない成人のきょうだいの慰謝料請求について

    民法711条によれば、死亡事故の被害者の父母、配偶者、子については慰謝料請求権が認められていますが、固有の慰謝料請求権を有する親権者の範囲をどのように考えるか問題となります。

    被害者の幸姫さんは、すでに実家を出て嫁いで2子をなし、3人目を妊娠しておられました。そこで、このような場合に、同居していない父母、同居していない成人のきょうだいに固有の慰謝料請求権が認められるのかが問題となりました。

    本件交通事故による遺族らの被害の過酷さ、味わった苦痛の厳烈さからすれば、遺族らの固有の慰謝料が否定されることは、あってはならないと考え、訴訟を提起し、主張を尽くしました。

    裁判所は、原告の主張を認め、判決において、同居していない父母及びきょうだいの慰謝料請求について、「(遺族は)幸姫さんのみならず妊娠7ヶ月の胎児を失い、筆舌に尽くしがたい苦痛、悲嘆、無念を味わった」と指摘し、同居していない父母のほか、同居していない成人のきょうだいへの慰謝料請求も認めました。

  3.  ③無免許運転が改正前の危険運転致死傷罪に相当すること

    遺族らは、被害に遭われて以来、やすむことなく、無免許運転の危険性を訴えて来られました。

    刑事裁判では、無念にも、無免許運転は、改正前の危険運転致死罪には当たらないことを前提とした判断がされました。

    民事裁判の中で、無免許運転の危険性を訴えることこそ、遺族の皆様の悲願でした。

    判決は、危険運転致死傷罪については判断しませんでしたが、過労などで正常運転ができなかったとの不法行為を認めました。

    吉原稔法律事務所は、今後も交通事故の被害に遭われた皆様や交通死亡事故の被害者遺族の皆様のお気持ちに沿った活動をして行きたいと思います。


吉原稔法律事務所

弁護士石川賢治、弁護士向川さゆり、弁護士石田達也、弁護士稲田ますみ(滋賀弁護士会所属)

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